あなたには、憧れているヒトがいますか?
今、多くの女性に憧れを抱かれる女の子がいます。それは、アーティスト オリタケイが描く“女の子”たち。TwitterやInstagramを中心に、女性だけではなく、男子高校生にまでファン層は広がっています。
オリタケイさんが描く女の子は、感情のゆらぎが繊細で、天真爛漫で、それでいて凛として。
額縁の中で自分らしさを満開にさせている女の子たちは、どのように生まれるんだろう…? 2月15日まで開催されている個展「オリティズム」の中で、オリタケイさんにお話を伺いました。
1995年9月生まれの23歳。株式会社piconでデザイナーとして働きながら、アーティストとしても活動。イラスト制作だけでなく、グッズデザインや漫画など、幅広く手がけている。
あえて誰でも手に入れやすい道具を使うのがポリシー

原画ってインクの滲みや擦れが出て、ひと味違いますね。女の子の表情が、より一層引き立つ気がします!
何か特別な道具を使ってるんですか?

いえ、コンビニで売ってるボールペンとか使ってますよ!

……………(聞き間違えたかな?)

コンビニによく売ってるZEBRA「サラサ」や、こすると消えるPILOT「フリクション」などを愛用してます。
特に、フライングタイガーのノート×uni「ユニボール エア」のコンビは、私のツボにドンピシャです。インクがきれいに染みるので、ぜひみんな使ってほしい‼︎

そうなんですか⁉︎︎ なんかこう、アーティストって、なかなか手に入らない高級な道具を使ってるイメージが…あります…。

んー。私は親しみやすい作品を作りたいんですよね。高い画材や道具を使えば、多くの人を感動させられるような、非日常のアートが完成するかもしれない。
でも私は、「難しいツールなんてなくても絵は描けるぞ!」ということを、日常に寄り添えるようなイラストを通して伝えたいなって。

もともと私は美大を目指していたんですが、学費も倍率も高くて…。リスク背負うにはコスパが悪かったので、潔く諦めました。でも、今は自分の書いたイラストが多くの人の目に留まり、原画やグッズを買っていただける。
美大に行かなくたって、誰もが手に入れられる道具だったって。ペンを握り続ければ、十分夢を叶えられる可能性はあるんだよってことを届けたいんです。

オリタさんの作品は、クリエイターを目指す人の背中を押してくれる作品でもあるんですね…

仮に、スマホもパソコンもない、手持ち無沙汰な状態だとして。チラシの裏紙とペンが目の前に置いてあったら、かしみんさんはどうしますか?

んんん。手にとって何かを描きはじめます。

そう、それ!特に小さい頃は、目の前に紙とエンピツが置いてあったら、なんとなく手にとって何かしら描いていたと思うんです。
だから、「自分なんてプロじゃないんだし…」とか自らハードルを課さずに、例えばスマホをいじるみたいに軽い気持ちで絵を描いてほしい。

スマホをいじるように…。

私は今でも、軽い気持ちを大切にしています。目の前に紙があればアナログで描くし、iPadがあればデジタルで描いてて。動かなくて済むテリトリーにあるもので制作してるんです(笑)。

作業場所にもこだわりはなくて、家で集中して描いたり、カフェにふらっと行って気分転換で描いたり。そのときのテンションでなんとなく変えています。

オリタさんのイラストは、道具も場所も問わない“軽やかな気持ち”から生まれてるんですね。
女の子の魅力を100%引き出すことに全力を注ぐ

シンプルだけど感情をゆさぶるようなイラストのテイストこそ、オリタさんらしさですよね。背景がなくて、線は細くて。

背景描くの苦手なんで、描いてなくて…(小声)
……というのもほんの少しだけありますが(笑)。背景を描かない大きな理由は、細かな描写が映えないから、です。

確かに背景があると、背景にも視線が分散されてしまう気がします。

女の子の表情とか、髪の質感とか、風に吹かれたスカートのなびき具合とか。背景を描いてしまうことによって、表現したい描写が100%表現しきれなくなってしまいます。
私は、背景に女の子の魅力を邪魔されたくないんです。

背景を描いていないことにも、大きなこだわりがあったんですね。
使う色を2〜3個にして塗っているのには、何か理由が……?

実は、女の子のイラストを描き始めた当初は一色使いでした。でも、途中で色をいくつか使った方が、逆に色の魅力が引き立つことに気づきまして。

色の相乗効果ですか!

そうです。例えば、こちらのセットアップを来てる女の子の原画。最初、赤のセットアップを書いていました。そこに黄色をプラスしたら、赤をもっと引き立ててくれると思って。
こんな風に、伝えたいイメージに沿って、自分の頭の中を最大限に具現化できるよう、色を組み合わせています。

表現のひとつとして、色は大切な要素なんですね。
でも、どうしてイラスト全体に色をつけないんですか?

塗りつぶしてしまうと、線が生きてこないんです。細く描いている線は、女の子の華奢さを表しているので。
線の繊細さを浮き出させるように、あえてシンプルに色をつけています。

オリタさんって、いつからイラストを描き始めたんですか?

小学生くらいですね。当時は、少年漫画系のイラストが好きで。戦闘モノの漫画ばかり描いていました。
動きが多くて骨格から意識して描くので、リアリティある絵が描けるようになるんですよね。

少年漫画系⁉︎ 今と180°違う……。
ワタシの憧れを代わりに。オリタケイが“女の子”を描く理由

いつから今のような女の子のイラストを描くようになったんですか?

2年前くらいですね。「漫画やイラストを描いている=スクールカーストが下のオタク」って思われるイヤで……。
おしゃれに見えるような絵を描きたいと思い、たどり着いたのが今のテイストです。

今のオリタさんのイラストを見て、オタクってワード、頭の片隅にも出てこないです。

女の子を描き始めたのは「おしゃれな絵を描きたい」って安直な理由ですが、どう魅せるかはめちゃめちゃ研究しましたね…。

イラストの女の子って、どんな流れで生まれているんですか?

まず、「これ描きたい」と思う表情やファッションが頭に浮かんできます。その表情やファッションが引き立つように、色やポージングを描きながら考えてるんです。

アイディアがパッと思い浮かんでくるんですか? さすがプロだ…。

いやいや! イラストのヒントを探しながら毎日生きています。
ZOZOTOWNを見たり、ショップをのぞいてみたり、雑誌をめくったり。あとは、街中をゆく女性も観察してますよ。

日常の中から「この女の子を描こう」と探しているわけですね。

主に、参考にするのは、ZOZOTOWNや雑誌に載ってる個性的な「ファッション」や、ショップや街にいる女性が身にまとっているファッションの「カラー」です。
「このコートかわいいけど、派手すぎて着られないや」「この色の組み合わせすてきだけど、自分には似合わない」。自分の心に生まれたこんな憧れを、自分が生み出す女の子に乗せています。
▲「l’atelier du savon」のコート(ZOZOTOWNより)
オリタケイさんがかわいいと思ったこのコート、
この女の子が着ています!

筆を取って、自分の心をゆさぶる表情やファッションを女の子に乗せることで「あーーーー、かわいかった!」と満足するんです。
言うならば、自分の憧れを、代わりに作品たちがまとってくれているイメージですかね。画集は、オリタの憧れ女の子カタログです。

憧れ女の子カタログ! すてき…。

トキメキを詰め込んだからこそ、原画がお嫁に行くことになったとき、「やっぱその女の子かわいいよね! わかる〜!」とお客さんにめちゃめちゃ共感してて。
そして、「ファンの方もイラストも、お互い幸せになりますように」と心の中でそっと祈ってます!
「親しみを持ってもらえるよう、特別な道具は使わない」と飾らない表情で話してくれたオリタケイさん。そんな彼女が生み出す作品だからこそ、多くの人の心を惹きつけるのだと感じます。
実際、個展をまわるファンの方々は、キラキラという言葉がふさわしい瞳で、イラストを見つめていました。
作者からもファンからも憧れられる額縁の中の“女の子”たちは、これからも愛されてさらなる輝きを放っていくことでしょう。
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いずきゃんでは、2月15日まで「オリティズム」を開催中!ぜひみなさん、オリタケイさんの原画を見に来てくださいね!