かわいいお菓子に囲まれて、甘い匂いにつつまれながら働けるお菓子屋さん。小さな頃、一度は憧れた人も多いのではないでしょうか。

 

そこで、今回のテーマは「お菓子屋さんになるにはどうしたらいいの?」。

 

豪徳寺にあるスウェーデンのお菓子屋さん「FIKAFABRIKEN(フィーカファブリーケン)」の店長 関口愛さんに、お菓子屋さんのなり方や楽しいこと、大変なことを聞いてみました。

 

 

お菓子屋さんを開業するには?

 

まず、開業に必要な手続きについて。お菓子屋さんを開業するには、食品衛生管理者の資格を取得し、食品衛生に関する届出を保健所に提出する必要があります。資格を取得し、許可がおりれば、自分の好きな場所にお店を準備して、晴れてお菓子屋さんをオープンできます。

 

手続き以外には、お店のテナントを借りたり、機材を準備したりすることも必要です。ここで大切になってくるのは、開店資金。

 

 

「どんなお店にしたいか」にもよりますが、

 

  • テナントを借りる初期費用
  • テナントの家賃数カ月分
  • お菓子をつくるための機材の代金
  • エアコンやショーケースなどの設備
  • イートインスペースを作る場合の家具

 

などで、最低でも100万円から200万円程度を見ておくといいようです。自己資金のほかにも、日本政策金融公庫の創業融資などもあるので、活用するのもひとつの手段ですね。

 

 

関口さんにお菓子屋さんになるために大切なポイントを聞いてみたところ、

 

 

「趣味で売っていくのとお店で売るのは、まったく違います。ロスを出さないことやお店をまわす臨機応変さ、経営のバランス感覚が大切です。勤めている感覚と全然違うので、お菓子作りの腕だけでなく、経営を学んでおくといいですよ」(関口さん)

 

 

と話してくれました。

 

 

実際、関口さんも自分で好きだったお菓子屋さんに連絡して、話を聞きにいったり、お手伝いさせてもらったりしたそう。「お店を持つと一緒に働きたい人と働ける、縁がつながる」のが、自分でお菓子屋さんを開業する大きなやりがいになると楽しそうに話す関口さん。

 

「スウェーデンのFIKA(フィーカ)というお茶の文化を大事にしたい」という思いが詰まった、お店にもこだわりがいっぱいです。

 

 

▲お店にはスウェーデンにまつわるアイテムがたくさん

 

 

ネットのお菓子屋さんと店舗のお菓子屋さんの違いって?

 

最近では、ネットのみでお菓子屋さんを開店するケースも。インターネット上の販売では、固定費がかからないのではじめやすいそうです。

ただ、「お客さんがくるのが楽しい」という店舗ならではのやりがいも。

 

 

「常連さんって想像のものだと思ってたんですが、自分が大切にしていると本当に通ってくれるんです。人とのつながりやおしゃべりも好きなので、日々発見で同じ毎日がないのは、本当に楽しいです」(関口さん)

 

必要な資格はあるの?まずはスキルの経験を積むのがベスト!

 

 

調理師の資格がなくても、お菓子屋さんの開業はできます。ただし、お菓子屋さんを経営していく上で、おいしいお菓子が作れることは必須。

 

常に人を楽しませるお菓子を作る腕を磨くのが必要です。関口さんも独学で働いていたスウェーデンレストランで技を見たり、製菓学校に通ってお菓子作りを学んでいたりしました。

 

 

「店舗のオペレーションや経営は学校で教えてもらえないので、見て学べる人は働く経験を積むのもいいと思います。受け身な人だと難しいので、とにかく技を盗む気持ちを大切にしていました」(関口さん)

 

 

店舗を構えていないときも、青山ファーマーズマーケットへの出店などで経験を積んでいた関口さん。お店を構える前の第一歩として、楽しみつつ役にたったそうです。

 

お菓子屋さんの名前やコンセプトはどうやって決めたの?

 

FIKAFABRIKEN(フィーカファブリケン)は、スウェーデン語で、「FIKA=スウェーデンのお茶の文化」「FABRIKEN=工場」という意味。つまり、“お茶の時間工場”というかわいらしい名前です。

 

開業時には、お店の名前やコンセプトを決めます。関口さんが大切にしたのは、お菓子屋さんを通して、スウェーデンの文化を広めたいという点。個人事業主の先輩などに相談し、「なぜお菓子屋さんをやりたいか」を深堀していきました。

 

結果、「文化は目に見えないから、お菓子を切り口に体現したい」という部分で腑に落ちたんだとか。

 

このコンセプトは、関口さんが留学時代の友人などに相談して決まりました。お菓子だけでなく、「食器やフィーカにまつわる物たちも、今後この場所から発信していきたい」という思いもあるんですよ。

 

スウェーデン語の造語なので、自分で作った言葉だけれど、「スウェーデン人がなんとなく意味がわかる」のもポイントになっています。

 

お菓子屋さんの仕事内容や1日のスケジュールは?

 

▲お店の調理台にはたくさんの器具があります

 

開業の部分でも触れましたが、お菓子屋さんの仕事は、お菓子を作る以外にもたくさんあります。メニューを考えたり、お菓子の原価計算したり。そこで、「お菓子屋さんの仕事内容は?」についても聞いてみました。

 

9時くらいにお店に到着

 

FIKAFABRIKENは12時のオープン。2〜3時間前くらいにお店に到着して、準備をはじめます。パンの発酵にかかる時間がだいたい1時間程度、その間に前日仕込んでいたケーキをカットして仕上げて…。このように、効率よく平行して作業を進めています。

 

オープン後は接客とお菓子づくり

 

オープン中は、お客さんがきたら対応したり、お話をしたり。ケーキの仕込みや足りなくなったお菓子を新しく作ることも同時にしています。

 

関口さんのお店で用意しているお菓子は、クッキーとケーキを14〜20種類ほど。同じお菓子でもラッピングを変えたり、セットの組み合わせを変えたり、工夫を凝らして、お客さんに手に取ってもらいやすいように考えます。

 

季節のメニューやその日仕入れたものでお菓子を作ることも。自分で作りたいものを決めて形にし、売れていく瞬間にはとてもやりがいを感じるそうです。

 

「スティック上のアーモンドケーキを『地味だから売れるかな?』と思いながらお店に出してみたら、人気で定番商品になったなんてこともあります。自分の考えとお客さんの反応が違うことがあるのも、おもしろいですね」(関口さん)

 

お菓子屋さんになってよかったと感じる瞬間

 

 

「フィーカの文化を届けたい」とお菓子屋さんをはじめた関口さん。お菓子屋さんを営業していくなかで「お菓子を作ること自体が楽しい」と笑顔でお話されていました。関口さんのお店のお菓子を通して生まれるコミュニケーションが、たくさんの人の楽しい場所をつくり出しています。

 

 

「お客さんとしゃべったり、スウェーデンの人が来てくれたりすることも、うれしいです。スウェーデン語や英語がお店のなかで行き交うこともあるんですよ。70歳のおじいちゃんが、『スウェーデンでカメラマンしてたんだよね』と応援してくれたこともありました。

 

『お店にいると縛られてしまうかも』と思ったこともありますが、自分なりに頑張っていたら、いろんな人の居場所になっていたことが本当に幸せです」(関口さん)

 

お菓子屋さんをしていく中での不安や乗り越え方

 

楽しいことが多い、お菓子屋さんというお仕事。「不安や大変だと思うことがないの?」についても聞いてみました。

 

 

「『売上が低いとどうしよう』という気持ちはありました。あとは、自分が元気ないときでも、店は絶対に開けなければいけない部分ですかね。

 

お客さんへの信用を大切にしているので、自分がどんな状態でもちゃんと開店しているお店を作ろうと頑張っています」(関口さん)

 

 

そんな関口さんの気分転換は、好きな音楽を聞いたり、お店で流れている音楽をラジオに変えてみたりすること。「いさぎよく休むときは休む!」とだらだらお店にいることも控えているそうです。

 

お菓子屋さんになりたい人がすべきこと

 

 

最後に、お菓子屋さんになりたい人がすべきことを聞いてみました。

 

 

「覚悟を決めることだと思います。自分でお店を開くとなったら、おいしいものを作り続ける覚悟を決める。流行っているお店は、おいしいものを作っているから、やっぱり売れるんです。

 

技術は、同じものを何百回も作ったら向上します。流行りだけに流されず、『自分がこれを作っていくんだ!』と決めることが大事ですね」(関口さん)

 

 

お店を持つのは努力が必要ですが、大変だと感じたとき、関口さんは「迷ったら困難な道を選ぶ」のを軸にしているそうです。場所も変わればライフスタイルも変わる、まずはやってみることも重要と話してくれました。

 

2017年7月に梅ヶ丘にオープンした「FIKAFABRIKEN」。関口さんが一人ではじめたお店は、青山ファーマーズマーケットや渋谷ヒカリエにも出店する人気のお店になりました。お菓子屋さんになるには、さまざまな実務も必要ですが、おいしいお菓子を届ける気持ちが一番大切なのではないでしょうか。

 

 

FIKAFABRIKEN

  • 住所:東京都世田谷区豪徳寺1-22-3
  • 営業時間:12:00-19:00
  • 定休日:月・火・水
  • URL:https://fikafabriken.jp/